牛が自然の中で草を食べている画像

日本では、まだまだ認知度がそれほど高くないアニマルウェルフェア。動物から命をいただいて生きている私たちにとっては、切っても切り離せない事柄です。日本で「動物福祉」と訳されるアニマルウェアですが、私たちは、動物たちのために一体何ができるのでしょうか。この記事では、アニマルウェルフェアについてお伝えするとともに、私たち消費者ができることをまとめました。

アニマルウェルフェアとは?

アニマルウェルフェアは、国際獣疫事務局(OIE)において、「動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・精神的状態」と定義されています。動物が生きるから死ぬまで、動物本来の行動欲求を満たして、できる限りストレスの少ない状態で生活できるように配慮した飼育方法を目指す考え方です。令和2年6月1日に施行された改正後の「動物愛護及び管理に関する法律」では、獣医に対して、虐待されている動物等を発見した際の都道府県知事等への通報を義務化、また、動物愛護に関係する団体に対して連携を強化するよう規定しました。

アニマルウェルフェアの理念「5つの自由」とは?

アニマルウェルフェアには、具体的な基準として、「5つの自由」という理念が掲げられています。

  1. 飢え、渇き及び栄養不良からの自由
  2. 恐怖及び苦悩からの自由
  3. 物理的、熱の不快さからの自由
  4. 苦痛、傷害及び疾病からの自由
  5. 通常の行動様式を発現する自由

それぞれの自由について内容を、下記で箇条書きにまとめましたので、ぜひチェックしてみてください。

1. 飢え、渇き及び栄養不良からの自由

1つ目の自由は、「飢え、渇き及び栄養不良からの自由」です。主に、家畜の飼育や輸送時の対応について言われています。家畜が、健康的に生活できるよう栄養管理に配慮することはもちろん、輸送時にも、家畜が飢えや喉の渇き・精神的な面でストレスを感じないよう配慮することについて述べられています。

POINT!

  • 畜産の種類に合わせて、量と質のバランスの取れた食事・生理的欲求を満たせる飲用水を得られるようにする
  • 飼料が、家畜の健康に悪影響がないか検査し、汚染や劣化を最小限に抑えられるように保管する
  • 輸送する場合は、種類・年齢・輸送時間・天候などを考慮して、適切な休息・給水・給餌を行う

2. 恐怖及び苦悩からの自由

2つ目の自由「恐怖及び苦悩からの自由」では、騒音や手荒い扱いなどによる恐怖・苦悩を家畜に与えないように、不適切な扱いに注意するとともに、飼養管理施設は騒音が最小限になるように維持・管理すること、また、家畜を追う際は、フライトゾーン(近づくと動物が逃げようとする一定の距離)を考慮して、家畜との距離を保つようにして、恐怖を与えないようにすることが述べられています。

POINT!

  • 騒音や手荒い不適切な扱いによって、家畜に恐怖や苦悩を与えないように配慮する
  • 飼養管理施設は、騒音を最小限にするよう維持・管理する
  • 輸送する場合は、種類・年齢・輸送時間・天候などを考慮して、適切な休息・給水・給餌を行う

3. 物理的、熱の不快さからの自由

3つ目の自由「物理的、熱の不快さからの自由」では、飼養・輸送の際に、暑熱対策・寒冷対策をおこなって家畜にとって快適な温度域を保つようにすることが述べられています。快適な温度は、品種や発育段階によって異なるので、飼養または輸送する家畜に合わせた温度管理が必要です。

また、飼養管理施設では、動物の尿などから発生するアンモニアなど有害物質が溜まりやすく、施設内のアンモニアや有害物質の濃度が高くなりすぎると、家畜にとって呼吸による不快感を感じる原因になったり、病気にかかってしまうリスクにもつながるので、適度な換気を行うことについても述べています。

POINT!

  • 暑熱対策・寒冷対策をおこなって、家畜にとって快適な温度を維持するように努める
  • 温度管理は、家畜の品種・発育段階に合わせておこなう必要がある
  • 適度な換気をおこなって、家畜が快適に呼吸ができるよう配慮する。また、病気にかかるリスクも下げるよう努める

4. 苦痛、傷害及び疾病からの自由

「苦痛、障害及び疾病からの自由」では、痛みを伴う処置をおこなう場合、若年齢でおこなうことや獣医の指導のもと鎮痛剤や麻酔などを使って、できる限り動物が苦痛を伴わないように努めることや、痛みを伴わない代わりの方法を考えることなどについて述べています。

また、家畜を追う場合は、ケガをさせるような道具を使わないこと。発育障害や虚弱によってやむを得ず殺処分をせざるを得ない場合には、直ちに殺処分をおこなう、または、直ちに意識不明の状態にし、なるべく家畜が苦痛を味わないように対処することについても述べています。

POINT!

  • 痛みを伴う処置をおこなう場合は、若年齢の時点で実施するか、鎮痛剤・麻酔などで苦痛を和らげるよう努める
  • 家畜を追いかける場合は、ケガをさせるような道具は使わない
  • やむを得ず殺処分をする場合は、できる限り家畜が感じる苦痛が少なくなるように努める

5. 通常の行動様式を発現する自由

「通常の行動様式を発現する自由」では、家畜同士で起こる優劣関係に配慮して群の構成を工夫したり、高い密度での飼育によるケガや病気、給餌・給水の不公平に配慮して飼育すること。また、飼養管理施設・輸送収容所では、家畜がストレスを感じたりケガをしたりしないよう、設備・床の素材・自然光の取り入れ・照明などに配慮して、家畜が不快感を抱かないように努めることについて述べています。

POINT!

  • 家畜同士で起こる優劣関係に配慮して群れの構成を考える
  • 高密度に収容し、家畜がケガをしたり、病気になったり、不公平な食事などが起こらないように注意する
  • 家畜が不快な思いを抱かないように注意して、飼養施設や輸送収容所の環境を整える

アニマルウェルフェアのために私たちができること!

まだまだ、日本では知名度の低いアニマルウェルフェア。一体どのように貢献できるのか疑問に思う人もいるかもしれませんが、私たち消費者にできることはあります。ここでは、消費者の立場からできるアニマルウェルフェアへの貢献方法についてお伝えしますので、ぜひチェックしてみてください。

1. 平飼いたまごを買う

平飼いは、平たい土地で鶏を飼育する方法。自由に動き回れるため、鶏にストレスをかけることなく飼育できるのが大きな特徴です。平飼いたまごの需要が高まれば、平飼い飼育を取り入れる畜産業を増やせる可能性が高まります。

残念ながら、現在の日本では、「ゲージ飼い」という金網張りの身動きを取るのがやっとの狭いスペースで飼育する方法が一般的です。平飼いたまごを購入することで、鶏の飼育環境の改善に貢献できます。

2. アニマルウェルフェアの認証ラベルのついた商品を購入する

アニマルウェルフェア畜産認証協会が独自で創った認証システム「アニマルウェルフェア畜産認証ラベル」。この認証ラベルのついた商品を購入することで、アニマルウェルフェアへ貢献できます。アニマルウェルフェア「5つの自由」を守り、動物・管理・施設の評価項目を80%以上満たしている商品に対して付けられるラベルが、アニマルウェルフェア畜産認証ラベル*(下記ラベル参照)です。

3. アニマルウェルフェアについてSNSでシェアする

アニマルウェルフェア商品を購入したら、SNSでシェアしてみましょう。まだまだアニマルウェルフェアという言葉自体知らない人は、日本にたくさんいます。SNSでシェアする大きなメリットは、アニマルウェルフェアの存在を知らなくて行動を起こしていない人たちに、行動を促すことができることです。一人でも多く、アニマルウェルフェアに貢献する仲間を増やしてみてください。

できることから少しずつ取り組みましょう!

アニマルウェルフェアのために、「これならやってみたい!」というものを見つけて、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。スウェーデンでは、バタリーゲージで飼われている鶏と平飼い飼育で飼われている鶏の比較写真を見た消費者が先に行動を起こし、アニマルウェルフェア先進国になりました。消費者一人ひとりの行動は、社会に影響を与える大きな力を秘めています。ぜひ、無理せずできることから実践してみてください。